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第6回法面工事雑学講座

皆さんこんにちは!

プロス工業株式会社、更新担当の中西です。

 

さて今回は

~鉄則~

ということで、今回は、法面工事を安全かつ持続可能に行うための鉄則について、設計・施工・管理の観点から深く掘り下げて解説します♪

 

法面(のりめん)工事は、道路・鉄道・ダム・河川・山岳地帯などで発生する斜面を安定化させ、崩落や土砂災害を防ぐために行われます。日本は地震や豪雨が多く、法面の安定性が社会インフラの安全性を大きく左右するため、施工の精度や管理体制が極めて重要です。


1. 設計の鉄則:地盤の特性を正確に把握する

法面工事の成否は、適切な設計ができるかどうかにかかっています。そのためには、まず対象となる地盤の特性を詳細に分析することが不可欠です。

① 地質調査を徹底する

法面の強度や崩壊リスクを判断するために、以下の地質調査を実施します。

  • ボーリング調査(地層の組成や強度を確認)
  • 標準貫入試験(土の締まり具合を測定)
  • 土壌試験(水分量や粒度分布を分析し、排水性や浸食リスクを評価)
  • 地下水位測定(水の流れが崩壊リスクに与える影響を確認)

これらの調査結果をもとに、適切な施工方法を決定することが鉄則となります。

② 斜面の安定性を数値解析する

近年では、法面の安定性を評価するために数値解析が活用されています。特に、斜面安定解析ソフト(FEM解析・Bishop法・Janbu法など) を用いることで、不同沈下やすべりのリスクを事前にシミュレーションできます。


2. 施工の鉄則:地盤条件に応じた最適な工法を選択する

設計が完了したら、実際の施工段階に移ります。施工では、斜面の安定性を高めるために、地盤の状態に適した工法を選択することが重要です。

① 法面の種類に応じた補強工法を選ぶ

法面工事には主に以下の3種類の法面があり、それぞれに適した補強工法があります。

  1. 切土法面(山を削った斜面)

    • モルタル・コンクリート吹付工法(斜面表面を補強)
    • 鉄筋挿入工法(ロックボルト工法)(内部の強度を向上)
    • グラウンドアンカー工法(深部まで補強して崩壊を防止)
  2. 盛土法面(土を盛って造成した斜面)

    • 植生マット工法(自然な緑化による安定化)
    • テールアルメ工法(補強土壁による安定性確保)
    • 排水工法(横穴・縦穴排水)(地下水の影響を軽減)
  3. 自然斜面(既存の山や丘の斜面)

    • 落石防護柵・ネット工法(落石リスクを低減)
    • 植生基材吹付工法(斜面の保護と緑化を両立)

② 排水計画を徹底する

法面崩壊の主な原因の一つは、雨水の浸透による地盤の緩みです。そのため、適切な排水工事を行うことが鉄則となります。

  • 暗渠排水工(地中の排水管を設置) → 地下水を排出し、土の強度を維持
  • 表面排水工(側溝や集水桝の設置) → 雨水を素早く排水し、浸透を防ぐ
  • 透水性舗装・保水型植生基材 → 雨水をゆっくり排出し、土砂流出を防ぐ

3. 安全管理の鉄則:施工中のリスクを最小限に抑える

法面工事は高所作業が多く、落石や土砂崩れのリスクが伴います。そのため、安全管理を徹底することが不可欠です。

① 仮設工の設置と作業員の安全確保

  • 足場・安全ネットの設置 → 高所作業時の墜落防止
  • 落石防止ネットの設置 → 施工中の落石事故を防ぐ
  • 作業員の安全装備(ヘルメット・ハーネス) → 個人の安全対策を徹底

② リアルタイムのモニタリングを活用

近年では、ドローンや3Dレーザースキャナー、IoTセンサーを活用し、法面の変状をリアルタイムで監視する技術が発展しています。

  • GPS計測 → 法面の微小な変動を測定し、異常を早期検知
  • 傾斜計・伸縮計 → 斜面の動きをリアルタイムで監視
  • 無人施工技術(ICT建設機械) → 安全性を向上させながら施工の効率化

4. 環境保全の鉄則:景観と生態系を考慮する

近年、法面工事には「環境との調和」が強く求められています。従来のコンクリート主体の工事ではなく、自然の景観や生態系を維持する工法の採用が重要です。

① 法面緑化を積極的に取り入れる

  • 植生基材吹付工法 → 種子と土壌を吹き付け、自然回復を促進
  • ジオセル工法 → セル状の構造体を用いて植生を定着
  • 自然石張り工法 → 景観に配慮しつつ耐久性を確保

② 環境に配慮した資材を使用する

  • エコセメント・リサイクル資材 → CO₂排出量の削減
  • 土壌改良材の活用 → 化学物質の影響を低減し、土壌の健康を維持

まとめ:法面工事を成功させるための5つの鉄則

  1. 地質調査を徹底し、斜面の特性を正確に把握する
  2. 適切な補強工法を選択し、法面の安定性を確保する
  3. 排水計画を確実に実施し、浸透水による崩壊を防ぐ
  4. 施工中の安全管理を徹底し、作業員のリスクを最小限に抑える
  5. 環境保全と景観に配慮し、持続可能な工法を採用する

これらの鉄則を守ることで、法面工事の品質を向上させ、より安全で環境に優しいインフラ整備が可能になります。今後も技術革新を取り入れながら、持続可能な法面工事の発展が期待されます。